A-O-TAKEの隠し部屋

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zoom RSS 妃宮さんの中の人 3-1

<<   作成日時 : 2011/01/09 17:43   >>

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 第三話開始。

 ちょっと短いかな……。

**********

「薫子!」
「千歳!」
「あたしたち、二人のエルダー!」

 ちょっと見は普通の女の子なんだけど、実は千歳は、精神年齢十歳の幽霊なんです。
 繊細な乙女心が分からない千歳は、問題を起こしてばっかり。
 さて、今日もどうなることやら。





 第三話 ある愛の歌





「とはーっ!」
「ひ〜ん!」


 あたしと千歳は、土砂降りの雨の中を必死に走りながら、寮の玄関へと駆け込んだ。
 梅雨ももう直ぐ終わろうかという七月の初め。ほんの30分ほど前までは良い天気だったのに、晴天俄かに掻き曇り。……ん? 一天だったかな? それは兎も角。

「これがゲリラ豪雨ってやつかぁ」
「ふえぇ、びしょびしょだよぉ……」


 フェンシング部で軽く運動した後、汗を掻いたのでシャワーを借りていたんだけど……シャワールームの窓から見ていた空が、あっと云う間に小降りから土砂降りに変わってしまったのにはホントにびびった。
 傘なんか持っていても役に立たないくらいの降りになるなんて、部活動が終わる時には想像しなかったよ。
 ウェーブの掛かった千歳の長い髪が、ペッタリと制服に張り付いている。勿論あたしの髪も同様で、きゅっと絞ると水が滴った。

「お姉さま方、こちらを」
「あ、史。ありがと〜」


 廊下の奥から現れた史ちゃんが、手にしていたバスタオルをあたしたちに渡してくれた。史ちゃんはそのまま千歳の後ろに回って、髪の毛の水分を拭き取っていく。

「入浴の準備も出来ておりますので、お身体を十分に温めてくださいませ」
「……ううむ、流石は気配りマニアの史ちゃんだね」
「侍女ですから」


 お決まりの台詞を聞いたあたしは、苦笑しながら制服を絞る。……これは、クリーニングに出さないと駄目だなぁ。
 制服の水分を拭き終わったあたしが廊下に上がろうとした時。

「ふわ〜! 宮藤陽向、ただいま帰りました〜!」

 背後の扉が開いて、雨と共に陽向ちゃんの声が吹き込んできた。振り向くと、濡れ鼠の陽向ちゃんが肩で息をしながら慌てて扉を閉めているところだった。

「お帰り、陽向ちゃん。ずぶ濡れだね」
「そう云うお姉さま方もびしょ濡れですね。こんなに降るなら、もっと早めに帰ってくれば良かったですよ」
「陽向ちゃん、何してたの?」


 千歳の質問に、陽向ちゃんは猫のように体を振って水滴を飛ばしながら、苦笑して答える。

「いや、明日から水泳の授業があるじゃないですか。だもんで、一般生徒がプールを使う前に大掃除をしようってことになりまして」
「へえ……?」


 室内プールが出来てから二年目だし、そこまで神経質になるほどのものでもないと思うけどなあ。普通の学校みたいに夏休み中の一般開放なんてことは無いから、設備だって綺麗なままだ。
 疑問が顔に出てたんだろう。陽向ちゃんはあたしに近寄ると、そっと耳打ちする。

「……実は、『G』が出ましてですね」
「……そりゃまた、ご愁傷様」


 アレが出たのなら仕方が無い。大方、内緒で持ち込んだお菓子とかがロッカールームにでも入ってたんだろう。フェンシング部にも出たことがあるし。

「……陽向さん、こちらを」
「あ、史お姉さま、有難うございます……見て下さいよ、これ」


 史ちゃんからバスタオルを貰った陽向ちゃんが、手に持っていた傘を掲げる。見ると、骨が折れてビニールの部分が剥がれていた。

「うわ、傘も壊れちゃったの?」
「まるで台風ですよ〜……クシッ」


 肩を竦めながらクシャミをするという、器用な真似をする陽向ちゃん。

「……陽向さんも、お姉さま方と御一緒に入浴した方が宜しいかと思います」
「そうだね〜。薫子ちゃんもそれで良いよね?」
「え? うん、そりゃ勿論」


 雨に濡れると結構体温を持っていかれるので、ほっとけば風邪を引くかもしれないし。



「「は〜……生き返る〜……」」

 足を浴槽に突っ込んだあたしと陽向ちゃんは、同時に同じ感想を漏らす。

「二人共、おじさんみたいだよ〜?」

 千歳が肩を揺らすけれど、出ちゃったものは仕方が無い。あたしと陽向ちゃんは互いを見ながら苦笑して、湯船の中に体を沈ませた。

「しかし、良く降りますよね〜」
「そうだねぇ……晴れたのは今日の昼間くらいで、今週はずっと雨だもんね」


 エルダー選挙の終わった翌週、盛り上がった生徒たちの気分を冷やすように、ずっと雨が続いている。ジメジメとした空気と夏の空気とが混ざり合って、不快指数も上昇中だ。
 こんな天気の時は教師陣もエアコンの使用を認めてくれるので、なんとか授業になっているけれど……普通の公立高校とかだと大変なんだろうなあ。

「ふん、ふふん、ふん、ふん、ふふ〜ん♪」

 だって云うのに、このお気楽お嬢さんは鼻歌なんぞを歌っているし。

「千歳お姉さま、楽しそうですね?」
「ん〜? 嵐とか台風とか、そういうのってなんかワクワクしない〜?」


 ……何を云ってるんだか。お子様か? ……ああ、お子様か。千歳さん、精神的には十歳なんだもんね。

「ワクワクですか……確かに、そういうのもありますよね〜」
「うわ……ここにもお子様が居る」
「薫子お姉さま、酷っ! 小説家志望としては、どんなことにも興味を持たないとイカンのですよ?」
「何故に疑問形か。……そう云えば、なんで陽向ちゃんは水泳部に入ったの?」


 小説家志望と云っているように、陽向ちゃんは文芸部に入部している。水泳部にも入ったんじゃ、執筆活動とか出来ないと思うんだけど。

「いや、ここだけの話なんですけどね……ダイエットの為に」
「はあ?」


 ダイエットって……陽向ちゃん、十分痩せてるじゃない。一部分だけ出っ張るとかじゃなく、全体的に。

「いえね、家庭事情の関係で、中学時代は帰宅部だったんですけどね? 家に居て執筆活動などをしながら、お菓子を摘みながら、ゴロゴロと寝転がりながら、等としていましたらですね?」
「あ〜、云わなくてもいいわ。良く分かった」


 そりゃ太るわ。……なるほど、それを避ける為に水泳部なのか。

「雑学ですけどね、水の密度は空気の800倍以上、抵抗で云えば12倍以上ですから。アクアエクササイズなんて言葉もあるくらいですしね」

 ちゃぷちゃぷとお湯を叩きながら云う陽向ちゃんは、そこで一旦言葉を留めてニヤリと笑うと。

「それに、折角のお嬢様学校なんですから。色々と体験して、インスピレーションを沸かせるべく頑張っているのですよ」
「あはは……お嬢様の水着姿を見て、どんなインスピレーションが沸くんだか……」


 そういえば、ケイリも水泳部だったっけ? 確かに、あの子を見ていれば霊感とか発達するかもしれないけどさ。

「千歳はどう思う……って、何してるの?」

 さっきから黙っている千歳に話を振ろうと視線を移すと、千歳は自分の胸をもにゅもにゅしていた。

「ち、千歳お姉さま……この場でそれは、少々フテキセツなのでは……?」
「こらこら、何云ってんの」
「ん? これはね〜、お母様から教えてもらった、おっぱいを大きくする方法〜」


 ……。

「「な ん で す と!?」」

 あたしと陽向ちゃんは一瞬で千歳に詰め寄ると、その肩を二人で抑えた。水の抵抗など無いかのような瞬間移動だ。

「わっ!?」
「千歳お姉さま、情報の独占はいけませんよ?」
「そうだよ千歳。さあ、キリキリ喋りなさい」
「こ、怖いよ二人共〜……」


 こう、まわりのお肉を集めるようにして胸を強めに撫で擦り、それから指のお腹で胸の下側を刺激するようにてしてしと……





「ふ〜、良い湯だった……」
「そうですね〜、色んな意味で良い湯でした……」


 あたしと陽向ちゃんはお風呂から上がった後、夕食が始まるまで食堂でまったりとすることにした。
 勿論、千歳も一緒に上がったのだけれど、ちょっと疲れたと云って一旦部屋に戻ってしまった。……さっき詰め寄りすぎただろうか? ま、それはそれだ。
 お茶を飲んで一息吐いていると、食堂の扉が開いて香織理さんと初音が顔を出した。

「あら、どうしたの、二人共。そんな悟りを開いたような顔をして」

 あたしと陽向ちゃんの顔を見て、開口一番そんなことを云う香織理さんもどうかと思うけれど。

「んふ〜……秘密です、香織理お姉さま」
「気持ち悪い笑いは止めなさい」


 一刀両断された陽向ちゃんだけど、大して堪えなかったらしい。きっと、香織理さんを超えるバストの夢でも見ているのだろう。あたしは今更って気もするので、そんなに大きくならなくても良いけどね〜……うんゴメン、見栄を張った。
 香織理さんと陽向ちゃんの漫才を見ながら、ふと隣に視線を移すと。

「……」
「……初音、今日も失敗?」
「……うん」


 肩を落として眉を寄せている初音の姿が気になって、思わず尋ねてしまった。聞かなくても分かることなのに。
 今週の頭から続く雨の所為で、身体の弱い優雨ちゃんは体調を崩していた。昨日、今日と学校にも行けず、ベッドの中で生活している。
 そんな状況もあってか、少し前から続いている初音と優雨ちゃんの仲違いも解決していないんだよね。
 初音は親身になって優雨ちゃんの世話をしたり、色々と話しかけたりしているけれど、殆ど効果は無い。

「無視されているわけじゃないんだけれど……なんて云うのかな……」
「……めんどくさい、とか?」
「……そうなのかな……?」


 あたしが呟いた一言に、初音が同意する。こちらの起こした行動に対して反応が無いというのは、本当に困ることなのだ。喩えるなら……そう、ギャグが滑った芸人みたいに? ……違うか。

「はい、初音お姉さま」
「ありがとう、陽向ちゃん」


 項垂れている初音の前に、陽向ちゃんがお茶を差し出す。香織理さんの分と一緒に用意してきたみたいだ。
 紅茶に口を付けて、ふう、と一息を吐く初音。

「面倒臭い、か。薫子も面白い考え方をするわね」
「え、そうかな? あたしはほら、身近な友人に同じタイプが居るから」
「……もしかして、茉清さんのこと?」


 香織理さんの言葉に頷いて返しながら、あたしは機嫌が悪い時の茉清さんを思い浮かべる。声を掛けても正面を向いたまま、眼鏡の奥の瞳だけでちらっと流し見る、そんな感じ。

「鬱陶しいとかそういう訳じゃなくて、口を開くのも億劫なんだってことらしいけどね。まあ、優雨ちゃんがそれに当たるかどうかは分からないけれどさ」

 どっかの漫画じゃないけれど、『歩くのも、息をするのもめんどくさい』って心境らしいからね。何でそんなに? って思うけど。

「でも……もし優雨ちゃんがそう考えているとして、私はどうするべきなのかな……?」
「う〜ん……」


 首を捻る初音の言葉に、みんなして考え込む。あたしは勿論のこと、他のみんなも優雨ちゃんみたいなタイプは初めてなんだろう。そう考えると、優雨ちゃんに懐かれている千歳は凄いんだなあと思っちゃうな。

「ううむ……何で避けられるかということよりも、何で好かれているかということを考えるべきかなぁ?」
「……それはもしかして、千歳さんのこと?」
「そういえば、千歳お姉さまは優雨ちゃんに懐かれてますよねぇ。何ででしょ?」
「……初対面の印象、とかだったらどうしようもないけれどね」


 香織理さんが苦笑交じりに纏める。そりゃそうだろう、初めて会うところからやり直さないと仲良くなれないなんて、どうしようもないことを云われても困るし。
 やっぱりあれかな、千歳は優雨ちゃんと共通点が多い、例えば病弱なこととかがあるから、優雨ちゃんの気持ちが分かるんだろうか?

「なんにしても……優雨ちゃんは、自分なりの『ルール』がある子みたいだから、そのルールを知ることから始めないといけないのでしょうね」
「マイルールかぁ……そういう云い方をすると、俗っぽく聞こえるんですけどねぇ」


 それは確かに。ある意味、我が侭って云えるかもしれないしね。
 しかし、項垂れている初音の為にも、早く問題解決すると良いんだけれどなぁ……。





「ふわぁ……」

 大きな欠伸をしたあたしは、時計を確認しながら肩を解す。陽向ちゃんから借りた小説がことのほか面白くて、ふと気が付けば22時。
 『夕陽の当たる教室』と云うその本は、担任の梶浦先生が書いたという噂の有る本で……まあ、ペンネームが上村緋紗と云うのだから、そんな噂が出るのも当然だろう。
 まあ、それはそれとして。久し振りに読んだ小説だったけど、この本は結構面白い。
 今晩中に読み切ってしまいたいので、早めに寝る準備をしてベッドの中で続きを読むべく、あたしはお手洗いに向かう為に部屋を出た。

「ん……雨、上がったのか……」

 本に夢中で気が付かなかったけど、いつの間にか雨の音も風の音も止んでいた。さっきまで台風みたいだったのに、廊下の奥にある窓から外を見ると、雲間から月が覗いていた。
 明日こそは晴れるかな? 天日で干した毛布の匂いが懐かしい……。
 そういえば、あの『太陽の匂い』がダニの死んだ匂いって嘘なんだよね。実際には、僅かに残った汗とか洗剤とか、そういうのが紫外線で分解された後の匂いなんだって。
 太陽の匂いか。優雨ちゃんみたいにずっとベッドに居る人間だと、そういう匂いはどう感じるのかな? 病院のベッドとかだと、太陽の匂いっていうよりは消毒液の匂いだよねぇ……。

「あれ……? 誰か居る」

 そんな益体も無いことを考えながら歩いてたら、テラスに人が出ているのが見えた。あれは、千歳と……初音かな? 二人共フリル付きのネグリジェなので、並んでいるとホントにお嬢様なんだな〜なんて思っちゃうな。
 雨も上がったばかりなのに、あんな所で何を話してるんだろう。初音なんて寝る時間だろうに。
 こっそりと通ろうかとも思ったけど、階段の正面にテラスがあるんだから気が付かれないわけが無いしなぁ。
 ええい、迷ってても仕方ない。行こう。

「……や、二人共、何してるの?」
「あ、薫子ちゃんだ」
「薫子ちゃん。……ん、ちょっと千歳ちゃんにも相談をね」


 さり気な〜く近寄って右手を挙げて挨拶すると、二人もあたしを見て会釈する。そうかぁ、やっぱりその件か。対優雨ちゃんの第一人者(?)な千歳に話を聞くのは、初音としては当然だもんね。

「で、解決策は見つかった?」
「それが……」


 良い案が出なかったのか、初音は言葉を濁して眉を寄せた。あたしは視線を千歳に移すと、千歳は小首を傾げてきょとんとしてる。

「ええとねぇ。私には、優雨ちゃんと話すのって難しくないから、上手い方法って云われても分からないんだ」

 うはっ! 初音がよろけたよ!
 千歳ってば、初音にはそれが難しいから相談してるってのに、さらっと傷口に塩を塗りこむような台詞を……。

「あ、あはは……」
「初音、大丈夫?」


 肩を落とす初音を励ましながら千歳を睨むけど、そもそも千歳には何が悪いのか理解してないんだし、効果は無いよね。
 ふむ、ここはアプローチを変えて……。

「……千歳はさ、優雨ちゃんとどんな話をしてるの?」
「どんなって……普通の話だよ。今日はこんなことがあった〜とか、何が楽しかった〜とか、そんな感じ」
「え……っ、そうなの……?」


 当たり前といえば当たり前か。初音は簡単すぎる内容に驚いているみたいだけど、千歳が難しい薀蓄を話したりする筈も無いし。

「やっぱりあれかな。自分が自由に遊びまわることが出来ないから、そういう話が楽しいのかな」
「えっ、でも……そう云うのって、羨ましがらせたりするだけで、却って良くないんじゃ……?」
「それはその時の気持ち次第だろうね。自分も外に出たいと思うこともあれば、自分は外に出れないのにって僻む時もあるだろうし……」
「私はちーちゃんや史とお話するなら、どんな話でも良かったけどね!」


 あっ……千歳ってば、それは結構ギリギリの発言……っ!

「えっ? ……あの、千歳ちゃんも、体が弱かったの?」
「あ、えと……うん。ちょっとだけ」
「どんな話なら嬉しかったとか、そういうのある?」


 初音に尋ねられて、千歳も失敗したって気が付いたか。目が泳いでるよ……。実際はちょっとどころじゃない話だし、ほんとのことを云う訳にもいかないけどさ。

「ええっと……本当に普通なんだよ? そもそも、あんまり長いことお話出来なかったから、話せるだけで嬉しかったんだ」
「そうなの?」
「うん。学校から帰ってきたちーちゃんが今日はこんなことをしたんだ〜って、手作りのおやつを食べながら一緒にお話したりしてた」


 手作りって……え、確か千歳が死んじゃったのって、10歳だよね?
 双子の弟なら当然千早も同い年で。その頃から料理してたってことは……何と云うか、随分と頑張ってたんだな……。

「手作りかぁ……そういえば、私はあんまりそういうことしてないなあ」
「いや、流石に優雨ちゃんぐらいの歳になれば、お菓子とかで釣るわけにもいかないでしょ」


 美味しい物を食べれば元気になるってのは分かる話だけど、優雨ちゃんは食も細いし、ケーキとかも調子が悪いと食べられないだろうし。

「そういえば……私、優雨ちゃんとお茶を飲みながら話したことって、あんまり無いなあ……四月のうちは結構お話できてたのに、いつの間にか、忙しさにかまけて一緒に居る時間も少なくなってた……」
「初音は生徒会が忙しいからね……陸上部にだって、顔を出せてないんでしょ?」
「うん……」


 寂しそうに初音が呟く。心の距離ってのは、実際の距離に依存するものだ。長いこと一緒に居れば相手の事が分かるようになってくるし、逆もまた然り。
 とは云え、初音は優雨ちゃんと一緒に居る為に生徒会業務を疎かにしたりしないだろうし。
 そもそも由佳里さんが異常だったんだよね、生徒会長と陸上部の部長を兼任っていうのが。

「初音ちゃん、取りあえずはお話をすることだと思うよ?」
「えっ?」
「心配だ〜とか、調子はどう〜とか、そういう話じゃなくて。優雨ちゃんの知らないようなことを一杯お話して、元気になったら一緒に遊ぼうって云うの。そうすれば優雨ちゃん、きっと頑張れるよ」


 顔を上げた初音に、千歳が真摯に話しかける。
 ……事実を知っているあたしとしては、それはちょっと悲しくなる台詞だった。千早や史ちゃんはきっとそうやって千歳を励まして……でも、千歳は……。

「……うん。取りあえずは、一杯お話をすることだね。分かったよ」
「頑張れ、初音ちゃん。応援してるから!」
「うん」


 あたしの思いは兎も角として、初音は取りあえずの方針を決めたみたいだ。

「ほら、初音。元気を出す為にもそろそろ寝ないと。もう、いい時間だよ?」
「……ん、そうだね。それじゃお休みなさい、二人共」
「お休み〜」


 廊下を歩いていく初音を見送ってから、あたしと千歳も廊下に場所を移す。ちょっと体が冷えちゃったかな……。

「それにしても千歳、あんまり千早のこととか喋っちゃまずいんじゃないの?」
「あはは……ちょっと忘れてた……」


 あたしの突っ込みに、千歳は頭を掻きながら視線を逸らす。ホント、初音とは別の意味で、千歳のことも心配だよ。なんであたしは、こんな気苦労キャラになっちゃったんだ?

「ま、それじゃ千歳も早く寝なよ?」
「うん。……あれ、薫子ちゃんはどこに行くの?」


 うん、正直な話、そろそろ限界なんだ。

「……お花を摘みに……じゃね」

 しゅたっと片手を上げて千歳との会話を切り上げると、あたしは階段に足を向ける。間に合え〜……。





 結局この日はそれで終わったんだけど、上手くいかないときはトコトン駄目なものでして。
 次の日、初音と優雨ちゃんは喧嘩になってしまったんだ……。


**********

 寮の間取りなんて分からない。果たしてどういう作りなのか?
 なんとなく分かるのは、寮内部に入ったときの階段があるCG(多分玄関から見てる)から考えるに、廊下が建物の中央を通っていて、両側に部屋があること。
 後は優雨以外の寮生が全員二階に住んでいることくらい。
 そもそもあの寮、定員は何人なんだろう……。

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
お久しぶりですね。第三章読ませていただきました。
今話では初音と優雨の絡みから始まりましたね。千早ではなく千歳が、初音に適切なアドバイスを与える事が出来るのか、など期待させて頂いています。
最後の記述にある二人の仲違いというのも、次回への想像を膨らませていただいています。
では、次話をお待ちしております。

2011/01/12 00:53
唯さん、いらっしゃいませ。

OPナレーション(?)にもあるとおり、基本的にズレている千歳ですからね。乞うご期待ということで。
じわじわと、原作から変えていこうと思ってます。

次も土曜日ぐらいに更新しますね。では。
A-O-TAKE
2011/01/12 19:12
報告です

・ちーちゃんや史ととお話する→ちーちゃんや史とお話する
・ほんとのことをいう訳にも→ほんとのことを云う訳にも


引き続き頑張ってください
Leon
2011/11/10 13:14
誤字、修正完了です。
A-O-TAKE
2011/11/17 15:08
再び報告です


・元気になるってのは分かる話しだけど→元気になるってのは分かる話だけど
・あたしと千早も廊下に場所を移す→あたしと千歳も廊下に場所を移す


千歳のこと考えたら悲しくなりますね…自分が健康体だから気持ちを分かってあげることは出来ないけど
Leon
2011/11/22 07:19
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