A-O-TAKEの隠し部屋

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zoom RSS 妃宮さんの中の人 4-1

<<   作成日時 : 2011/03/27 23:35   >>

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 お久し振りの第四話。

 漸くの再開です。ちょっとペースは落ちるかもしれないけど、これからも宜しくお願いします。

**********

 この広い空の下には、幾千、幾万の人達がいて。
 いろんな人が、願いや思いをいだいて暮らしていて。
 その思いは、時にふれあって、ぶつかりあって。
 だけど、その中の幾つかは、きっとつながっていける、伝えあっていける。
 これから始まるのは、そんな、出会いとふれあいの話。
 幽霊少女タカシマイチコ、始まります。





 第四話 異人たちとの夏





「たっだいま〜!」

 寮の玄関を思い切り開けて、テンションの高い声を上げる千歳。何故かと言えば、まあ、先程終業式を終えたからだろう。
 そう、夏季休暇である。
 千歳にしてみれば数年ぶりの夏休みとなるわけで。寮へと帰ってくる道すがら、目を輝かせながら夏の計画を色々と語ってくれた。
 そりゃあ勿論、何もしないでのんびりしているよりは、色々と楽しんだ方が良いに決まっているわけだけど。

「……千歳さあ。今からそんなんじゃ、疲れちゃうよ?」
「大丈夫、問題無い!」


 問題有るって。疲れたら自動的に千早と入れ替わっちゃうってこと、忘れてるんじゃないの?
 まあ、最近は史ちゃんや千早が注意しているようで、そんな事態にはなっていないけれど。

「お帰りなさい、千歳ちゃん、薫子ちゃん。……千歳ちゃんは、もう少し声を小さくしてね?」
「は〜い」


 玄関で靴を脱いでいると、階段を降りてきた初音が苦笑しながら声を掛けてきた。まあ、千歳のあの返事を聞くに、ぜんっぜん反省してないみたいだけれど。

「初音、早いね。生徒会は?」
「お仕事は昨日で全部済ませてあるから、今日は挨拶だけなの。薫子ちゃんたちは遅かったね?」
「あ〜、あたしたちは、フェンシング部の掃除を手伝ってたから」


 聖應のフェンシング部は残念ながらそれほど強いわけじゃないので、夏休みの活動は有志のみになっている。なので、休みの前に大掃除をすることになったのだ。どういうわけか千歳もノコノコ付いてきて、掃除に参加していたけれど。

「えへへ、お菓子貰っちゃった」

 鞄の中からクッキーやら煎餅やらの袋を取り出した千歳を見て、初音の眉が困ったように下がった。

「薫子ちゃん? 校則では、部室に飲食物を保管しちゃいけないことになってるんだからね?」
「うっ……いや、別にあたしが持ち込んだ訳じゃ……ゴメンナサイ」


 真面目に守っている生徒は殆ど居ないのでそれほど厳しくは言わないけれど、初音の頬がちょっと膨らんでいたので、あたしは慌てて頭を下げた。
 持ち込んだその日で食べてしまうのなら兎も角、部室に置きっぱなしになっていると衛生上の問題があるので怒らない訳にはいかないんだろう。
 食中毒とかネズミとか『G』とか、そういうのを発生させるわけにはいかないからね。

「ああ、そうそう。二人とも、荷物を置いたら食堂に来てくださいね。休み期間中の事について、連絡事項とかありますから」
「ん、OK」
「うん」


 あたしたちが頷くのを確認してから、初音は食堂の方へと歩いていった。その背中を見送ってから、あたしたちは階段を上る。
 ……あ、そうだ。

「とりあえず千歳、そのお菓子は初音への貢物にしようか」
「ん、そうだね」






「それでは、休みの間の注意事項なんかをお話します。……とは云っても、たいした話じゃないんだけどね」

 ちょっと舌を出して云う初音に、あたしたちも笑う。寮則だって実に適当なものしかないこの寮で、一般常識以上の難しい話になるわけ無いしね。

「まず、寮母さんは来週から来月の末まで夏休みになります。ですから、その間の食事や、共同スペース――お風呂とか――の掃除は個々人ですることになります。みんなで協力しましょうね」

 うんうん、その辺りは例年通りだね。去年はお姉さまが居たから色々と楽だったけど……掃除や洗濯は兎も角、炊事がなぁ……。

「次に、学校内の活動について。夏休みとは云っても、部活動等で学校に出てくる人が居ますので、通常の休みの日と同様に学校内で活動する時は制服着用となります。寮の中なラフな格好でも問題無いですけど、暑いからってだらしない格好は駄目ですよ……薫子ちゃん?」
「ちょ、なんで名指しなのさ。だらしない格好って云うなら、香織理さんの寝巻き姿の方が――」
「胸に手を当てて考えましょう」


 ぐっ、途中で遮るとは……去年の夏、着崩したジャージでコンビニに行ったの、結構話題になっちゃったからなあ……。

「あのねえ薫子。いくら私でも、昼間っからあの格好でうろついたりしないわよ」
「ですよねぇ〜。あの格好は痴女……はぅわわわ、お姉さま、痛いです痛い!」
「はいはい、話を戻しますよ〜」


 香織理さんと陽向ちゃんの漫才を手を叩いて止めると、初音は足元に置いてあったホワイトボードを食卓の上に乗せる。

「食事の用意をするときは、火の元や怪我に十分注意してください。食材等は自由に使えますけれど、使用して無くなった物はここに書いておいて下さい。登校日に合わせて寮母さんもこちらに顔を出すそうなので、その時に確認するそうですから」

 む〜、簡単な料理なら出来なくもないけれど、やっぱりコンビニとかで済ませちゃいそうだなあ。……いかん、太りそうだ。

「後は……特に無いかな?」
「えっ? これで終わりですか?」


 初音の言葉に陽向ちゃんが驚いてる。まあ、お嬢様学校の割には適当すぎるからね。基本的には普段のお休みと同じだから、難しく考えることも無いんだけどさ。

「そうだなあ、夏休みだからって、自堕落な生活をしないようにってことぐらいかな」
「……だ、そうよ。薫子?」
「だーから、なんでそこであたしの名前を出すかな?」
「「胸に手を当てて考えましょう」」
「むむむ……」


 くそう、ダブル攻撃とは卑怯な。

「みんなの方は、何か連絡事項はありますか? 旅行の予定とか決まっている人は、緊急時の連絡先とかを早めに教えてくださいね」

 そう云いながら、初音は自分の連絡先――ニューヨークのご両親の家――をホワイトボードに書き込んだ。

「初音、出発は?」
「八月に入ってからだよ。登校日の後、直ぐに」
「あっ、はいはい、私も八月に入ってから家族旅行です!」


 ふむ、陽向ちゃんも居なくなるのか。

「あの……私も……」
「あれ、優雨ちゃんも旅行なの?」
「……ううん、病院」


 そっと手を上げた優雨ちゃんに初音が尋ねると、意外な言葉が出てきた。思わず視線を集中させたみんなに驚きながらも、優雨ちゃんは口を開く。

「……もっと元気になりたいから、リハビリ、頑張る」
「そっか……頑張ってね、優雨ちゃん」
「うん……それでね、あの……はつねに、お願いがあるの」


 ちょっと屈んで目線を合わせた初音が励ますと、優雨ちゃんはちょっと赤くなって、なんかモジモジし始めた。

「なあに? 私に出来ること?」
「……うん、えっとね……元気になったら、生徒会のお手伝いがしたいの」
「えっ? 生徒会?」
「……駄目?」


 何と意外なお言葉。初音が驚いて聞き返すと、優雨ちゃんはちょっと上目使いに初音を見上げた。

「えっと、駄目じゃないけれど……優雨ちゃん、園芸部とか美術部に興味があったんじゃなかったの?」

 そうだよね。確か入学したての頃、千歳と一緒になって園芸部とかに顔を出してたと思うけれど。
 でも、優雨ちゃんはちょっと首を振って、それを否定する。

「……その……元気になって、もっとはつねと一緒に居たいから……」
「……っ!!」


 ズッギャ―――z___ン!!
 ……喩えるならそんな感じで、初音が衝撃を受けた。優雨ちゃんが不思議そうな顔をしながら、動きの止まった初音を見る。
 でも、次の瞬間。

「優雨っちゃーん!!」
「……わっ……」


 がばちょ、と初音が優雨ちゃんを抱き締めた。う〜ん、デジャブが……ああ、そうそう。紫苑さんがお姉さまを抱き締める時もあんな感じ……って。

「初音、ストップ、ストーップ! 優雨ちゃん窒息しちゃう!」
「あっ!?」
「……ぅゅ……」
「ゆ、優雨ちゃ〜ん!?」




「……さて、気を取り直して、と」
「うわ、香織理お姉さま、さらっと流しましたね」


 優雨ちゃんは初音と一緒に退場しました。いやまあ、初音の気持ちは分からなくも無いけどね? 流石は優雨ちゃん、破壊力抜群だ。
 あと、やっぱり胸が大きいと谷間に埋もれて窒息するということが分かりました……羨ましくなんかないぞ!

「そう云えば、千歳の予定はどうなの?」
「私? 私はお家に居る予定だよ」
「私も、お屋敷の方で千歳さまのお世話をしますので、こちらに顔を出す機会は少ないかと」
「ありゃ、そうなんだ」


 そうなると、八月に入ってからはあたしと香織理さんの二人っきりか。

「……香織理さん、料理の方は大丈夫?」
「私は普通に出来るけれど……でも、起きてこないなら作ってあげないわよ?」
「うっ……頑張ります」


 あたしが何を云いたいのか分かったんだろう。太い釘を刺されてしまった。
 そんなに食に拘らないと云っても、毎日焼いたトーストと目玉焼きとかそういうのは勘弁したいからね。真面目に起きる努力をしないと……。

「しかし、聖應ぐらいのお嬢様学校になると、夏休みにも余裕があるんですね〜」

 あたしが腕を組んで如何に早起きをするべきか考えていると、陽向ちゃんが妙なことを云った。

「あら、それはどういう意味?」
「いえね、お姉さま方は三年生じゃないですか。世間一般の学校なら、入試だなんだと細かいことの準備とか、補習とかそういうのがあるんじゃないのかな〜と……」
「ああ、そういうこと。まあ、聖應は短大までのエスカレーターだし、余程成績が悪くなければ問題は無いから」


 だからそういう話でこっちを見ないでよ、香織理さん。これでも一応、期末では平均点取れたんだから!

「……学校側では、希望者を募っての夏期講習を行なう予定があったはずですが、興味がお有りならば申込書をご用意いたしますが?」
「「いえっ、いりませんっ!」」
「あはは、薫子ちゃんと陽向ちゃんの方が姉妹っぽいよね〜」
「私は悲しいわ、陽向はこうやって姉離れしていくのね……」
「ちょ、嘘泣きしないで下さいよ、香織理お姉さま〜!」






 良くも悪くもアットホームな感じなのがこの寮の特徴。
 まあ他の学生寮がどんなものかは知らないんだけれど、個室に篭って出て来ないなんてことが起こらないのは、この寮の良いところだと思うんだよね。

「ふっふっふ……夏といえば、やっぱり怪談特集ですよね〜……」
「ひ、陽向ちゃ〜ん、そんなに雰囲気出して云わなくても……」
「あれ、初音お姉さまはこういうの苦手ですか?」


 例えば、各個室にTVが備え付けられていても、こうして食後に集まってみんなでバラエティー番組を見るところとか、家族って感じがするんだ。
 怪談みたいな番組は、一人で見てても面白くないしね。

「わくわく、わくわく」
「いや、口に出して云わなくていいから」


 あたしの隣に居る千歳が、小声でぶつぶつ云いながら身を揺らしている。あんた幽霊でしょうに、何が楽しいんだか。

「照明、落としたほうが良いのかしらね?」
「だ、駄目だよ香織理ちゃん。目が悪くなっちゃう」


 うむ、初音は必死だなあ。そういえば由佳里お姉さまも幽霊が苦手だったっけ。そういうところ、姉妹として似るのかもしれない。
 由佳里お姉さま、そう簡単にイメージは変わらないとか何とか云ってたけど、あれってどういう意味だったのかな?
 ちなみに番組のタイトルは、そのままズバリ『学校の怪談』。良くある学校の七不思議を中心とした番組みたいだ。
 あたしが新聞のTV番組表を見ていると、スピーカーからタレントさんの声が聞こえてきた。最初は……『赤い半纏』か。これ、結構有名だよね。

「……はつね、大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ〜。お姉さんだからね〜。……ひうっ」


 ガシャーン! と云う効果音に驚いて変な声を上げてるけど……ぜんっぜん大丈夫じゃないね、あれは。

「そういえばさ、この間、陽向ちゃんが聖應の七不思議とか話してたよね」
「あれ? 薫子お姉さま、興味が有るんですか?」
「いや、全種類聞きたくなるじゃない、そういうのって?」
「薫子……学校の怪談って、全種類を知ると不幸が訪れるらしいわよ?」
「えっ……」
「きゃ〜! 聞こえない、私は何も聞こえない〜!」


 あ、初音が壊れた。怖いのなら部屋に戻ってればいいのに……そうか、今となっては独りで部屋に居る方が怖いのか。

「優雨ちゃん、優雨ちゃん」
「……なあに、かおるこ?」
「今日はさ、初音と一緒に寝てあげると良いと思うよ?」
「……? 分かった」


 意味が分からずに首を傾げた優雨ちゃんだけど、まあ、姉妹の中を深めるということで頑張ってもらおう。これなら初音も安心して眠れるだろうし。
 そんなこんなをしているうちに、怪談の内容は『花子さん』に変わっている。これもまた定番ものだ。
 う〜ん……ある意味楽しんでる初音は良いとして……あんまり面白くないかなあ……。
 あたしはもう一度TV番組表に目を落として、内容を確認する。
 テケテケ、赤紙青紙、夜中に動く標本、合わせ鏡の呪い、カシマレイコ、音楽室のモーツアルト……ん? 七不思議じゃないじゃん。
 どれも名前を聞いたことが有るけれど、説明文を見ると、ちょっと内容が変わっているみたい。

「なんかさぁ、間違い探しみたいだよね」
「……そうね」


 思わず呟いた声に、香織理さんが相槌を打つ。なんともびみょ〜だ。
 陽向ちゃんは、話の内容そのものよりも構成のほうを楽しんでるみたいだけど……。
 これ2時間特番だし、先にお風呂でも入ってくるかな。
 ……。

「初音、優雨ちゃん、一緒にお風呂に入ってこようか」
「……? うん」
「う、うん! 一緒にだね!」


 ちょっと涙目になってる初音が可愛いと思ったのは内緒だ。
 え? 内緒にしなくても分かるって? ですよね〜。



「は〜……私やっぱり、ああいうのは苦手です〜……」

 たっぷりの湯船に浸かりながら、初音が脱力している。

「初音はホント、ああいうのが駄目だよね」
「だってだって、見えないんですよ? 怖いじゃないですか」


 口を尖らせて文句を云う初音の隣には、ちょっと心配そうな優雨ちゃん。そういえば優雨ちゃんはあんまり怖がらないなあ。やっぱり千歳を見たことがあるからかな?
 まあ、世の中の幽霊がみんな千歳みたいなのだったら、そりゃあ怖くは無いだろうけれど。

「幽霊……未練を残して死んだ人、かぁ」
「ど、どうしたの薫子ちゃん?」


 お風呂の縁に顎を乗せながら呟くと、また怖い話が始まると思ったのか、初音が震えた声で尋ねてきた。
 あたしは首を振りながら、

「いや、ね。未練を残して死んだ人が幽霊になるっていうなら、幽霊になってない人は未練を残さなかったのか、何て考えちゃってね?」
「ええ?」
「ほら、あたしの母さんはあたしが生まれた時に死んじゃってるからさ……何というか、あたしのこととか心配じゃなかったのかな〜なんて……」
「……薫子ちゃん」


 あ……しまった。

「ごめん、今の無し。忘れて」
「ん……」


 うっわ、気拙い。何でこんなこと云っちゃったんだろ? 母さんに会いたいなんて、そんなこと考えたのは何年振りだろう。
 やっぱりあれかな。千歳に慣れちゃったせいか、居るのなら見てみたいって普通に考えてた。
 顔を合わせ難くてそのままの体勢で居ると、不意に肩を突かれた。肩越しにそちらを振り向くと、優雨ちゃんがきゅっと両手を胸の前に合わせていた。

「……大丈夫」
「え?」
「……おかあさん、かおるこのこと、ちゃんと見てると思う……」


 優雨ちゃん……。

「……ありがとね」
「ん……」


 そうだよね。あたしには見えないだけで、案外その辺に浮いていてあたしを見ているかもしれない。
 さっき自分で考えたじゃないか。世の中の幽霊がみんな千歳みたいなのじゃないって。うん、見守ってくれてるっていうなら、ダラダラした夏休みを過ごして呆れられないようにしなくちゃね。





 ……と、まあ、そんなことを考えていたのが終業式当日の夜のこと。
 千歳みたいな幽霊なんてそうそう居ない……と、思ってたんだけどね。



『う〜ん……いくら里帰りの時期とはいえ、なんで此処に来ちゃったんでしょうかねぇ〜。まあそもそも25年も経っているわけですし、今更実家に顔を見せるというのもアレなんですが……。でもそれを云うなら、そもそもカトリックである私がこうしてお盆に此処に戻ってくるというのもどこか間違ってる気もしますしねえ……』



「……ん、んん……?」

 なにか、ブツブツ云ってる声で目が覚めた。
 なんだろ、また千歳が来て騒いでるのかな? 朝から元気なんだから。
 眠い目を擦りながら枕元の時計を探し、適当に掴んで目の前に引き寄せる。……6時……?

「……もう、こんな時間に起こさないでよね……」

 あたしは時計を転がすと、布団を被って二度寝をすることに決めた。こんな早い時間から千歳の相手は出来ないもん。



『しかし、この部屋も変わりませんねえ。お姉さまはとっくの昔に卒業しちゃってるはずなのに、家具とかそのままにしてあるなんて……。ああ、懐かしいお姉さまのベッド、まだお姉さまの匂いがする気がします。……いやいや、三年も経ってるのにそんな匂いするわけ無いじゃないですか! ……一人でノリツッコミしても空しいですねえ……』



「……む〜……」

 煩いな……何騒いでるんだろ。
 頭から布団を被って、聞こえてくる声を遮ろうとする。



『う〜ん、まだ6時ですか。この時間なら、寮の中を見て回っても大丈夫ですかねえ。人が起きている気配も感じないし……いや、私にそんなことが分かるわけ無いんですがっ! では、ちょっと失礼して……そ〜っと、そ〜っと……』

「あ〜! もう、煩〜い! 朝から耳元でごちゃごちゃ云うな〜!」
『ひあっ!? 済みませ〜ん!』

 ……布団を跳ね除けて怒鳴ったら、目の前に女の子が浮いていた。

「……えっと。……どちら様?」
『あ、これはどうも失礼しました。私、高島一子と申します。どうぞお見知り置きを』
「はあ……えっと……はあ?」

 夏用の制服を着たショートカットの女の子。あたしの部屋の壁から上半身が生えている形だ。

「えっと……もしかして、幽霊さん?」
『あはは……やっぱり分かっちゃいますか?』

 ……うん。

「夢だ。寝よう」
『あ、はい。お休みなさい???』

 なんか返事が返ってきたけれど、きっと幻聴だろう。あたしは布団を被りなおしてベッドに横になる。
 ……。

「そんな訳ねぇ〜!」
『ひうっ!?』
「ちょっとアンタ、顔を出しなさい!」

 再び布団を跳ね除けると、その女の子はあたしの部屋を通り過ぎて隣の部屋へと頭を突っ込んでいた。
 あたしは勢い良く体を起こして、お尻をこっちに向けている女の子を掴み出そうと手を伸ばし――その瞬間、あたしの部屋の扉が勢い良く開き、香織理さんが声を上げた。

「ちょっと薫子、こんな時間から何を騒いでいるの! 珍しく早起き――――はぅ」

 言葉の途中で幽霊の女の子を見て、香織理さんが固まる。……と思ったら、そのまま膝から崩折れた。

「わ〜!? 香織理さ〜ん!?」
『わ〜!? もしかして私の所為ですか〜!?』
「他に誰が居るのさ! 香織理さん、確りして〜!」


 こうしてあたしと香織理さんは、一人の賑やかな幽霊少女と出会ったのだった。


**********

 あのマシンガントークが懐かしい。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
お久しぶりです。
第四章第一話読ませていただきました。今話で夏休み絡みで“あの方”がいらっしゃったので驚きましたが、ここで香織里さんに幽霊の存在を示したので今後の展開が楽しみです。
震災の後、そちらは大丈夫でしょうか。日頃贔屓しているサイト様各位も大変だったり、あるいは音信不通の方が多々おり、不安になっています。
私自身も全く被害がなかったかと言えばそうでもなく、処理に追われる毎日です。今回の閲覧が少々遅れたのもそのためです。
次回の更新を期待しておりますので、どうかご健勝のほどを。では、失礼します。

2011/04/02 00:38
唯さん、いらっしゃいませ。
夏休みオリジナル話なんですが、PSP版の公開画像を見ると夏祭りイベントが有るようなので、どうしようか迷ったんですよね。
とはいえ、一子を出せるのはこの話くらいしかないのでプロット通りとなりました。今回は終始どたばたしっぱなしの話になります。

不幸中の幸いというべきか、被災地認定されましたので停電は回避されています。液状化による地盤沈下がありますので、余震が続くとガス・水道が破断なんてことになるかもしれないので、安心できるわけではないのですが。
個人的には家のことよりも仕事の方が大変ですね。
工場っていうのはその会社だけで完結する仕事じゃないので、どうしても客先都合などで取引停止になったりしますから……。

ともあれ、まだまだ落ち着ける状況ではありませんので、お互いに頑張っていきましょう。では。
A-O-TAKE
2011/04/03 19:08
「気まずい」を「気拙い」と何回か訂正と称して報告してきましたが、自分でもどちらが良いかは分かっておらず、ただ事務的に報告したに過ぎませんので悪しからず
ここでの「まずい」は平仮名のままの方が…何て思ったりしたので改めて伝えさせて頂きました

投稿日からかなり経っているので自分の何気ないコメントが、PSP版等のネタバレになるんじゃあ…とも思いましたが…
さすがにもう大丈夫かなって開き直ることにしました
これを読む人は既にプレイしてる人が多いと思いましたので
Leon
2011/11/24 16:09
妃宮さんの中の人 4-1 A-O-TAKEの隠し部屋/BIGLOBEウェブリブログ
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