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zoom RSS 妃宮さんの中の人 5-EX-1

<<   作成日時 : 2011/07/31 16:20   >>

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 今回は事前に書いておいた話。

 烏退治後の、とある一日。

**********

 聖應女学院フェンシング部。
 小さいながらも専用の競技場も持つこのクラブ。此処では、剣士を目指す少女たちが日々汗を流しながら練習に励む姿を見られる……かと思いきや、実は部員よりも見学者の方が多いという奇妙なクラブだった。
 その原因となっているのが、員数外として練習に参加している『騎士の君』こと七々原薫子である。
 鏡の前で構えを確認したり、あるいは剣を振ってみたり……薫子の動きに合わせて、競技場の扉から覗く少女たちがさざめく。
 普段であればそれほど気にも留めない部員たちであるが、先日の烏退治の一件から見学――という名の薫子の追っかけ――が増えてしまい、残暑の厳しさも相まって苛立ちが募ってきていた。当然と云えば当然か。見学者の為に扉を開けているので、折角の冷房が意味を成していないのだから。

「薫子、そろそろ準備は良いかな?」
「ん……OK」


 体を伸ばして動きを確認していた薫子が、フェンシング部部長の三屋桂花の声に振り向いた。
 いよいよお姉さまの出番だと目の色を変える見学者たち。一段と声を上げる彼女たちに向かって、我慢の限界だった桂花が無常な一言を放った。

「はい、貴女たち。それ以上騒ぐのなら此処から居なくなるか、それとも入部するかのどっちかを選びなさい!」
「ええー!?」
「そんな、横暴ですー!」
「カーッ! さっさと消えなさーい!」


 口を開いて威嚇する桂花に、見学者たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。云う方も逃げる方も口元に笑みを浮かべており、その光景が、日々繰り返されている冗談の類だということが伺えた。

「全くもう……一人ぐらい残ろうって云う気概のある子は居らんのかねぇ?」
「そんな子は、四月の段階でとっくに入部しているでしょうよ」


 桂花のぼやきに苦笑しながら薫子が応える。
 新入部員の獲得合戦に於いて、薫子は客引きとして桂花と模擬戦をしており、二人の勝負に魅せられた者はその場で入部届けにサインをしたものだった。
 ……尤も、その後の厳しい練習に涙を流す人間が殆どなのであるが。

「さて、それじゃ仕切りなおし」
「桂花さんと遣るのも久しぶりだね」


 桂花がマスクを持って、薫子の対面へと移動した。
 聖應のフェンシング部は、電気審判機を使用しないで練習をしている。
 勿論、対外試合や公式試合ではそれらの機械を使うので、備品として用意されてはいるのだが……それらの準備をして試合をするよりも、使わないで試合をする方が時間的に早いことは云うまでもない。
 幸いにして、現在のフェンシング部ではエペ(フェンシングの競技の種類。サーベル・フルール・エペの三種がある)が主流の競技であり、どこを突いてもポイントになる。攻撃優先権が無い、と云う素人目でも判断しやすい競技なので、機械に頼る必要も無かった。

「(ま、実際には試合を見る眼を養うためでもあるんだけどね)」

 次期部長と目している後輩に主審をするよう命じながら、桂花は構え線に立った。
 幅2m、長さ18mの狭い戦場。薫子を相手にして此処に立つ度に、桂花は二年前の薫子を思い出す。
 自分の『姉』でもあった先代部長、フェンシング部のエースだった一条和枝を下し、『騎士の君』となった瞬間のことを。

「ラサンブレ・サリュエ」

 主審からの「構え・礼」の言葉に、桂花は気を取り直して薫子を見る。互いに頭を下げ、頭を上げ……挑戦的に光る薫子の眼を見て、にやりと笑って返す。
 あの日、勝負を終えた薫子は格好が良かった。マスクを外して長い髪を解く瞬間、汗が煌めいて美しかったのを覚えている。
 どこかお遊びの延長線として考えていたフェンシングに対して、本気で取り組むようになったのはあの後からだ。簡単に云ってしまえば、桂花は、自分もあのように格好良くなりたいと思ってしまったのである。
 桂花は厳しい練習にも耐えて努力を重ね、ついには部長と呼ばれるまでになった。引退するその日までに、あの日のお礼をしなければ気が済まないのである。
 薫子にしてみれば、全く道理の通らない話だろう。薫子は姉である奏の為に戦ったのであって、その日の桂花の気持ちなど知りもしないのだから。

「アン・ガルト」

 構え、の声にマスクを被り、構え線に片足の踵をつける。

「エト・ヴ・プレット?」
「「ウィ」」


 用意は良いかと尋ねる声に、桂花と薫子の言葉が重なる。張り詰める空気。

「……アレ!」

 開始の声に、二人の剣士がゆっくりと動き始めた。



 薫子はその性格から、攻撃一辺倒の剣士だという印象を受けがちである。
 事実、部員以外の人間からは、圧倒的な強さで相手を倒すという映像が浮かんでいるだろう。それは多分に憧憬やら希望やらが上乗せされているのであろうが、実際にはそんなことは無い。
 エペという競技はどこを突いてもポイントになる為に、慎重に戦う場合が殆どである。こちらを突きに来た相手の手首を狙ったりもするので、基本的な動作、特に防御が大事なのだ。
 薫子の得意技がプリーズ・ド・フェール(剣の鍔元で相手の剣を捕らえ、こちらの攻撃に繋げる)ということから考えても、攻撃よりは防御に重きを置いた剣士なのだ。
 しかし、そんな薫子にしても、桂花の相手をするのは一苦労である。

「(実力も勿論そうだけれど、フェイントが上手いんだよなあ……)」

 細かいフットワークで剣先を上下に揺らしながら、薫子の様子を伺う桂花。
 剣先だけではなく桂花の全身を見るようにして、薫子は桂花の攻撃を待つ。
 桂花は真っ当に能力を伸ばした剣士で、特にアタック・ド・フェール(剣の中央部で相手の剣に触れ、相手の攻撃を防ぎながら攻撃する)を多用する。
 つまり、薫子は桂花の攻撃を防いで反撃するのに対し、桂花は薫子に反撃させないように攻めるということである。
 様子を伺うように互いの剣先が何度か交差し、金属の擦れる音を鳴らす。

「(遣り難い……来るか……っ!)」

 揺れる剣先に戸惑いながら、しかし、剣先の位置が変わらずに桂花の体が前に出ていることに気が付いた薫子は、そのタイミングを見計らう。
 そして次の瞬間、薫子の読み通りに桂花の剣が動いた。するりと伸びた桂花の剣の中程が薫子の剣先に触れたかと思うと――

「シッ!」

 鋭い呼気と共に薫子の剣先が打ち叩かれる!
 叩かれた勢いに薫子の手が振れて、剣の動きが鈍くなる。その瞬間を逃さず、桂花の剣先が薫子の頭を目指して突き掛かった。
 たとえマスクをしているとしても、顔、特に眼に向かって攻撃されると恐怖を覚えるものだ。しかし、桂花の動きを予測していた薫子は、慌てることなく後ろへと飛び退りながら、弾かれた剣を半回転、縦に構えて防御に入る。

「ちっ……」

 軽い舌打ちの音と共に、桂花の剣先が揺れた。間合いが離れて突き込めないと判断した桂花が、薫子の反撃を恐れて引いたのだ。
 勿論、薫子もその隙を逃さずに、引いていく桂花に合わせて綺麗なフレッシュ(突撃)を仕掛ける。
 勢いに押されるようにして、二歩、三歩と下がる桂花。
 先程までのゆっくりした展開からの速攻に、見学している部員たちが息を呑んだ。あっという間に桂花が競技場の端まで追い詰められた。
 薫子が、勢いを殺さずにファント(突き)を見舞う。
 ガ……シュッ!
 剣がぶつかる鈍い音。次いで、剣が擦れ合う耳障りな音を聞いて、薫子の背筋に嫌な予感が走った。
 桂花の剣先が、薫子の剣をなぞるようにして鍔元へと伸びる!

「(ヤバッ……!?)」

 自分の剣先を相手の剣に押し滑らせるようにして、相手の攻撃を逸らしながら自分の攻撃に繋げる――フロアスマンと呼ばれるアタック・ド・フェールの一種、桂花の得意技だ。
 桂花の剣先が薫子の鍔元へと進むと、蛇が跳ねるかのように大きく振れ、二の腕へと伸びる――その、直前。

「ハッ……アァ!」

 押し滑らされて脇へと避けられた薫子の剣が、手首を中心にしてクルリと回転したかと思うと、桂花の剣にピタリと張り付いて更に一回転する!
 薫子の剣に巻き込まれるようにして捻られた桂花の剣が、位置を定められずに外側へと払い飛ばされた。

「チッ……!」
「遅い……っ!」


 反撃を受ける……もう下がれない桂花が、それでも何とか避けようとするより早く、お手本のように綺麗なファントが桂花を襲う。
 桂花は剣を引きながら薫子の剣を逸らそうとするも、体の外まで弾くことは出来ずに、左の胸に突き立った。

「アルト! 有効打、七々原!」

 審判の声が響く。薫子のポイント先取だ。
 桂花は剣を持っていない手で頭を掻きながら――マスクの上からなので、ただのポーズである――苦笑した。

「いやー、参るわ。あんだけ綺麗なコントル・パラード、何時覚えたのさ?」
「あはは、あたしだって自分で驚いてるけどね」


 コントル・パラード。相手の剣に自分の剣を合わせ、剣を押し付けながら円を描くようにして動かし、相手の剣を払い除ける防御技だ。薫子の得意技であるプリーズ・ド・フェールの一種、アンブロップマン(巻き込み)にも通じる動きである。

「桂花さんだって、振り込みしようとしてたでしょ。あれ、モノになったの?」
「薫子が大人しくしてれば、試せたんだけどね〜」
「いや、無茶云わないでよ」


 長く細い金属で出来ているエペは、振ることで撓りが生じる。勢いよく振ったエペを、腕力と握力で無理やりに途中で止めると、剣先だけが勢いに負けて撓るということが起こる。その撓りを利用して相手を突くことを、振り込みと云うのである。
 桂花は薫子の鍔元まで剣先を伸ばした後、勢い良く上下に剣を振って撓りを生じさせ、薫子の上腕を突こうとしたのだ。
 相手の防御を掻い潜って攻撃する、高等技術である。

「でもまあ、やっぱりまだまだだね。手首が馬鹿になるところだった。もっと鍛えないとダメだわ」
「あはは……林檎を捻って割るぐらい、だっけ?」


 林檎を両手で持って、互い違いに回転させて半分に割る……冗談のような話だが、それぐらいの握力がないと上手くいかない、などという話もあったりする。

「……あのう、お姉さま方。談笑も良いですが、早く構え線まで戻って下さいませんか……」
「おっと、御免」


 おずおずと声を掛けてきた後輩に、二人して苦笑する。

「さて、先制はされたけど、もう譲る心算はないよ。部長の面目ってものがあるからね」
「へへ〜ん、そう簡単にはいかないよ」


 軽口を叩きながら構え線まで戻り、ガルトを取って合図を待つ。
 親友と云っていい間柄の二人だが、だからこそと云うべきか、性格も似通っている。負けず嫌い……それ故に、勝負事では絶対に手を抜かない。

「アレ!」

 審判の掛け声と共に、二人のフェンサーは再度激しくぶつかり合った……。





 聖應女学院には、乙女たちの、乙女たちによる、乙女たちの為の秘密の会議場がある。
 普段は人の立ち入ることも少ない、薄暗く冷たい空気の篭る場所。……ぶっちゃけて云えば、中央階段の下にある地下倉庫なのだが。
 そんな地下倉庫では、裸電球が弱々しい光を放つ中、一つの古ぼけた机を中心にして人が集まり、伝統的な会合が開かれようとしていた。

「こ、こほん……さ、さて、同士諸君! これより第112期生、三回目の会合を始める!」
「……何時まで経っても慣れないね……はつね」
「い、云わないで〜……それと私は初音じゃないよ、司令官だから!」
「あ〜、はいはい、そのお約束はもう要らないですから」


 第112期生とは云うものの、聖應の創立時から行われている会合ではない。
 数年前のとある生徒が、その年のエルダーを面白可笑しいこと……もとい、その年のエルダーの為に有志数名で会議を行ったのが始まりである。
 この秘密の会合は、代々の司令官(なぜかそう呼ばれている)が秘密裏に次の世代へとバトンを渡し、会合の参加者も司令官の恣意的な基準で選ばれている。主にエルダーの近親者……実態を知っているものと云った方が良いだろうか?

「……しかし、この場所に集まるのも、気にならなくなったわね」
「そうですね。最初はこっそりと、人に見付からないように扉を潜ったものですけれど」


 普段は使われない場所だ。人が出入りしていれば目立つだろう。しかし、実は対象となるエルダー以外には知られている会合だったりするわけで、みんな見て見ぬ振りをしているだけである。
 何故知られているかと云えば、その昔、この会合の発案者が『みんなは一人の為に・一人はみんなの為に』作戦を発動して、その経緯を人伝に聞いた生徒たちがこの会合に参加することを夢見ているからなのであるが……それはさておき。

「え、え〜、今回集まってもらったのは他でもない」

 司令官の声に、参加者たちが息を潜めて次の言葉を待つ。様式美である。

「来るべき体育祭に於いて、我らがエルダー七々原薫子、妃宮千歳両女史を仮装競争へと出場させるべく、皆の知恵を借りる為であります!」
「……なんだ、そんなこと?」
「そ、そんなことって……」


 参加者の一人から、いかにも詰まらないと云った感じの呟きが洩れて、司令官が力を落とした。

「多分、千歳さんは司令官がお願いすれば、二つ返事で引き受けるでしょうね」
「そうですね〜、楽しいことダイスキ! ですからね〜」
「薫子お姉さまの方は、初音お姉さまが泣き落とせば問題無いと思いますよ」
「……ううっ……もう、そのパターンは使いたくないんだけどなぁ……」


 泣き落としとは云っても相手も嘘泣きには慣れてきているので、最近では目薬をそっと手の中に忍ばせて涙を流す振りをしている司令官である。薫子の方も、最近ではしっかりとお礼をせしめることも有ったりする。

「まあまあ……どうしてもダメならば、私が泣き落としてあげるから。それなりに溜まっている貸しを返してもらうのもいいしね」
「うわ……汚いです、流石香織理お姉さま、汚い」
「……陽向、後でお仕置き」
「あ〜、それはそれで良いとして。これだけの為に呼んだわけじゃないでしょう?」
「あ、はいはい。……ええと、エルダーに着て頂く衣装を選ぶというのも、この会合の参加者の特権……いえ、務めですから」


 司令官はそう云いながら、懐から取り出した一冊のアルバムと、写真の束を机の上に広げる。
 アルバムは歴代エルダーや仮装競争の参加者たちの様子を写真に収めたアルバムで、開いてみると随分と年代物の写真もあった。
 写真の束の方は、恐らくは衣装の候補なのだろう。ハンガーに掛かった様々な衣装が写っている。

「まあ……歴代のお姉さま方も、随分と凝った衣装で走っておられるのですね」
「……う〜ん、これなんか、絶対に走れなさそうな衣装なんだけどなあ」
「まあ、主となるのは競争ではなくて仮装だから、仕方がないでしょうけれど」


 アルバムの写真にはドレスのような派手な洋服から、和服、男装、果ては鎧を纏って走っている姿が写っていた。

「この鎧……いったい何だってこんなものが?」
「ええと、それは演劇部でドン・キホーテを演じた時に使ったものだそうですよ。素材はプラスチックに発泡スチロールだそうです」


 さすがに呆れた声を出す参加者に、司令官が手元のメモ帳に目を落として注釈を付けた。

「ちょっと待って。それって、この鎧を作ったってこと? いくらプラスチックって云っても凄いね……」
「聖應の演劇部は、伝統と実績が有りますから」
「全国大会の常連ですもんね……」
「まあ、これを着て走らされる方は、そんな事情は関係ないんでしょうけれどね」


 その言葉に、参加者たちの間に苦笑が広がる。件の写真では、宝塚の男役のような容姿の少女が、唇を引き結んで走っている姿が写っていた。

「参加者たるもの、みっともない姿は見せられない、か。大変なことだね」

 笑いながら走れとは云えないが、嫌々という様子で走っていては場の空気が悪くなるだろう。その為にも、度を越さないギリギリの範囲で、面白そうな衣装を選ぶ必要があるのだ。

「……あ、私、千歳お姉さまにはこれが良いと思います」

 参加者の一人が、すい、と一枚の写真を束の中から引き出した。そこに写っていたのは、中世ヨーロッパの貴族が着るような、俗に云うかぼちゃパンツの王子様ルックだった。

「うわ、御前ってそういう趣味だったの? ちょっと意外……」
「ふふっ……いえ、水泳の授業で千歳お姉さまと一緒だった方から、おみ足がすらっとしていて綺麗だったと聞いたもので」
「……白タイツ、似合いそうですね……」


 うんうん、と何人かが頷く。

「千歳ちゃんに王子様って云うのも、ギャップがあって面白いかもしれませんね。では、これにしましょうか」
「異議無し」
「うん、良いんじゃないかな」
「と、なると……これに合いそうな衣装を薫子に着せると。どれが良いかしらね?」


 参加者たちが無造作に広げられた写真を探る中、一人の指が一枚の写真で止まった。

「……王子様と云ったら、やっぱりお姫様が必要よね」

 その言葉に、参加者たちの視線がその写真に集まる。写っているのは、海外の王族が着るウエディングドレスも斯くや有らんというような、フリルとレースが沢山付いたドレスだった。

「あ、良いですね、それ!」
「うわぁ……もしかして、これもうちの演劇部が作ったんですか?」
「ええと……それは、何年か前の手芸部が、創造祭の展示物として作ったみたいですね」
「……手芸? どこが?」
「……フリルとレースの部分ですかね?」


 参加者の何人かが首を捻る。ドレスを一着作るなら手芸というよりは縫製の部類だろうが、それを成した努力は認めてもいいかもしれない。

「まあ、経緯はどうあれこれだけ立派なドレスなんだ。薫子さんに着せてみようじゃないか」
「さんせ〜い」
「薫子さん、きっと泣いちゃいますよ?」
「あはは……そうかも」
「……ところでこのドレス、走っている最中に縫製が解けたりしないわよね?」
「……確認しておきます」


 ドレスを着て走りました、脱げました、では泣くどころの騒ぎではなくなってしまうだろう。足を引っ掛けて倒れそうな衣装なのだ、丈夫さの確認はしておくべきだった。

「……さて、では話が纏まったところで、今回の会合はお開きとする。尚、この会合で話された内容は――」
「はいはい、他言無用、よね?」
「……最後まで云わせて〜、お約束なんだから〜」


 司令官が泣きながら立ち上がって、裸電球のスイッチ――ぶら下がった紐――を引っ張った。





「私、茉清さんの仮装姿も見てみたいです」
「えっ? いや、でもなあ……」
「ダメ、ですかね……?」
「……まあ、大人しめので良いなら、考えなくもないかな」
「あはっ、やりました!」
「そのかわり、聖さんも参加してね」
「ええっ!?」




「お姉さまの王子姿か……」
「ふふっ、雪ちゃんも参加したらどうですか?」
「ええ〜? 嫌だよあんな恥ずかしい格好」
「……お姉さまの隣で、ドレス姿になってみたいと思いませんか?」
「うっ」
「……体育祭の記念ということで、並んで写真に納まったりはしたく有りませんか?」
「ううっ」
「……王子様の隣にお姫様……薫子お姉さまだけに取られるのはもったいないのでは?」
「くっ、卑怯だよ、うたちゃん! そう云ううたちゃんはどうなのさ?」
「あら、私はきっと、来年の仮装に参加することになると思いますから」




「……さよこ」
「あら、栢木さん。初音との用事は終わったの?」
「うん……あのね、お願いがあるの」
「お願い?」
「これ……」
「なあに、この写真……リスの着ぐるみ?」
「うん」
「はあ。それで、リスの着ぐるみがどうしたの?」
「あのね、――」
「ええっ? いや、でも……」
「駄目かな……可愛いと思うけど……」
「うん、それは可愛いとは思うけど、でもねえ……」
「……」
「あ、ああ、分かったから、そんな目で見上げないで。……何とかしてみるわ」
「本当? ありがとう……!」
「うっ……(初音の気持ちが分かるわね……)」



**********

 フェンシングの知識は20年以上も昔のものなので、信じないで下さい(笑)
 完全にうろ覚えです。しかも、実際に遣っていたのは私ではなく父親ですので……練習に付き合って見学してただけ。

 そして体育祭は本編に絡まないので、今回と次のEXでのお話になります。


 

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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
秘密会議を詳細に(?)描写しているのは、小説版を含めて初めてじゃないでしょうか。
そして、同時に…雅楽乃って、史上初めて(?)秘密会議の存在を知ってるエルだーになるんですね…多分。
描写を見るまで、完全に失念してました。
もう女装の男子生徒は送り込めないだろうから、おとボク3、というのは難しいと思いますけど、やっぱり、雅楽乃の代の聖應も、見てみたいと思いますね。
…特に、雅楽乃エンディングで「ふりーだむ」になった設定で(笑)

そして…何か、仮装がずいぶん増えそうなのが楽しみです。
初音ファンとしては、(千歳と薫子の籠絡は楽そうなので)リスが初音に行く事を祈る事にします。

やっぱり、おとボクって、世界観がいいんですよね。
読んでいて、気持ちいいし、温かくなります。
ずっと読み続けて痛いので、無理しない範囲で、続けてくだされば幸いです。
えるうっど
2011/07/31 22:41
お久しぶりです。
第五章番外話読ませていただきました。
今回は完全に番外的な薫子のフェイシングの話と、某会議による体育祭の仮装についてでしたね。
前話の感想でのもう一つの泥棒、というのも淡雪の出番を期待してお待ちしております。
後は蛇足ですが、えるうっど様の言う通り、おとボク3…というのはそろそろ厳しいと思いますので、出るのだとしたら番外的な小説・攫いの園のエトワールでしたか?薫子が聖應に来たときのように、千早卒業後の一年間をまた誰か別の主人公視点で進んでいく話になるのではないでしょうか?
また、それがあるのだとしたなら、更におとボクワールドが広がるので、今後ともに期待が募る思いです。ですがまあ、アニメが期待が大きいので、今後ともに楽しみにいたしましょう。
では、長文失礼しました。

2011/08/01 00:10
えるうっどさん、こんばんは。
秘密会議は……だって、普通書く人居ないでしょ、原作者はともかく(笑)
しかし、ゲーム内では「伝統」と初音が言っているので、君枝と奏のときにも誰かが会議をしているはず……恐らくは可奈子と由佳里だと思いますが。
ん? 奏は確か一年の時に出ていたよね……?

おとボク3は望み薄ですね。ファンブックのインタビューでも舞台は聖應にならないみたいなことを書いているし……そもそも、シナリオ担当の嵩夜あや先生がキャラ箱を退社しちゃいましたしね〜。ファンディスクくらいは出して欲しいところですが。
それなら、雅楽乃はヒロイン投票で2位(1位は薫子)だったので後日談ぐらいはあるかも?

では、またお越しください。
A-O-TAKE
2011/08/01 19:52
唯さん、こんばんは。
次話、現在書き直し中です……実はネタ的に次の節(六話)と連動する心算なので、ちょっとプロット調整しないと大変で……まあ、今週末には何とか。

アニメ化の内容が早く決まれば、他の展開も速くなるのかなあ、と思いたいところです。なにせ、キャラ箱というかおとボクのHPには、GA文庫の二巻のことが触れられてないんですから。やる気無いのかって思いましたけどね。
アンソロジーや四コマ関係も止まってるし……他のライターさんが書いてるのはみんな18禁展開だし……普通のは無いのか?
まあ、そういうことだから自分で書いているんですが!

ともあれ、何か動きがあるのを期待しましょう。
では、またお越しください。
A-O-TAKE
2011/08/01 19:58
報告です


・仮想競走へと出場させる→仮装競走へと出場させる
・あら、柏木さん→あら、栢木さん


おとボク3に関しては出て欲しいですが…みんな退社しちゃったしなぁ…
千早と瑞穂の絡みなんかも見てみたかったりするんですが、そしたら誰が奥さんに…とか決めないといけないんですよね
何か難しいところです
Leon
2011/11/11 12:13
報告の訂正です


「仮装競走」は「仮装競争」とした方が良いのかな
原作では後者だったはず…たぶんですが
体育祭本編の方にも関係しますが、「競走」or「競争」と単独で使用する場合をどうするかってのもあるんですけども


いやー、エトワール読んで以来初めてフェンシングに興味持ちましたね
ある選手の活躍でメディアでも観る機会はあったんですけどね
おとボクが好き過ぎてちょっと影響されてます(笑)
Leon
2011/11/25 21:52
度々すみません

・桂花の剣先が薫子の頭を目指してを目指して突き掛かった→桂花の剣先が薫子の頭を目指して突き掛かった
Leon
2012/02/01 21:25
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