A-O-TAKEの隠し部屋

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zoom RSS 妃宮さんの中の人 6-4

<<   作成日時 : 2011/10/10 23:24   >>

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 今回はちょっと中休みといった感じのお話。

 ご都合主義万歳!

**********




「あ、もしもし? あたしよあたし、あたしだって。……詐欺じゃないっつーの。姉の声を聞き忘れるなんて薄情な妹分ね〜」
『――! ――』
「いや、冗談だからそんなに怒んないの」
『――』
「ん? ああ、ちょっと色々と遣ることがあるんでね、只今里帰り中なのよ。それで、折角だから会わないかな、と思って」
『――』
「何よ、あたしと会うより大学の方が大事?」
『――。――』
「……ほう、中々面白そうな話じゃないの。ここは一つ、あたしにも詳しく話してみなさいな」





**********





「――と、云うわけで、生徒総会で初音の信任投票みたいなことを遣ることになったので、もう大丈夫だと思います」
「……そう、良かったわ」


 初音が謹慎して二日目――水曜日――の放課後、あたしと千歳は理事長室で梶浦先生に事の顛末を説明していた。
 ホッとして軽く笑う梶浦先生を見ると、この人はホントに優しいんだなって思う。
 経営側である筈の理事長代理と云う立場に有る以上、本来なら一人の生徒を守るよりも学院全体を守る方が優先されるのだから、初音を見捨てたって良かった筈なのだ。
 それを、梶浦先生は「初音も守りたい」と思って手助けしてくれるのだから、あたしとしてはいくら感謝したって足りないよね。

「それにしても、烏橘さんはちょっと災難だったわね?」

 そんな言葉に意識を戻したあたしは、苦笑している梶浦先生を見る。

「あ〜、まあ、それは……何の相談もしてくれなかった沙世子さんにも責任があると云うことで」
「ふふっ……意地悪なのね」
「でもでも、私は悪者になるよりも、笑い者になる方がずっと良いと思います!」


 それは笑い者になることを受け入れられる、アンタみたいな人間にしか通用しない理屈だと思うけどね。
 沙世子さんは人に笑われるのを慣れていないだろうし、あたしとしては生徒総会の後に仕返しされるんじゃないかと思うと怖くて仕方が無いんだけど。
 まあそうなったら、千歳を生贄に捧げるとしよう。昨夜、千早のアイデアを受けて、「お友だちリスト」に片っ端から電話して噂を広めるようにお願いしたのは千歳なのだし。 ……問題は、それで沙世子さんが納得しなかった時だけどね。

「まあ、皆瀬さんの話はこれで良いとして……後の問題は、寮監のことよね……」
「えっ、今まで通り初音が続けるってことじゃ、駄目なんですか?」
「それでも構わないのだけれど……生徒総会の決定で皆瀬さんの信任が得られても、職員会議で寮監に就いて打ち合わせすると云うのは、決定していることですから」


 口約束程度の話なら兎も角、既に職員会議用の資料も整えられている以上、寮監のことに就いて打ち合わせすることを「無かったこと」には出来ない。
 そこで生徒総会のように初音の信任が得られれば良し、駄目ならば、新しい寮監あるいは寮母さんが常駐するようになるかもしれない……と梶浦先生は云う。

「う〜ん……」
「以前にも少しお話しましたけど、「生徒たちを守る」という趣旨の元に出されている要求ですから、強く反対することは出来ないの」


 そうだよね。押し付けっぽい話ではあるけれど、理由としては至極真っ当なものなんだから、それに反対する為にはこっち側もちゃんとした理由が必要になる。

「ねえ、薫子ちゃん。寮則を変えるのは駄目なのかなあ?」
「ん? いや、どうかなあ。寮則を変えるのは学院側の承認が必要になるから、そこで「生徒たちだけでも大丈夫」と思えるようなものにすれば、何とかなる、かも……?」


 あたしは千歳に答えながら、ちらと梶浦先生の方を見る。梶浦先生は軽く頷いて、

「決定打には為り得ないけれど、話をする上で有利にはなるでしょうね」

 と、云ってくれた。少なくとも、全く意味が無いと云うことは無いだろう。

「その辺りのこと、初音と話してみるかな……」

 寮則が今のままでも、厳しい寮監が来るようになれば、どうせ規則で雁字搦めになってしまうのだ。それならこっちから譲歩して、なるべく現状維持出来るようにした方が良いからね。





「おや? 千歳さんに薫子さん。まだ帰ってなかったのかい?」
「そう云う茉清さんだって」


 理事長室で話を終えて教室に帰ってみると、茉清さんが一人、席に座って本を読んでいた。
 日が暮れるのも早くなる十月の半ば過ぎ、暗いところで本を読んでると目が悪くなるよ?

「私はちょっと待ち合わせをね。二人は?」
「あたしたちは、理事長室」
「……ああ、初音さんの件か」


 茉清さんは一人頷いて、読んでいた本を閉じる。……って、あの本、文芸部が出した例の本じゃないか。

「茉清さん、それ……」
「ああ、これ? ……ちょっと興味があったから、文芸部に有るバックナンバーを借りてきたのよ」


 あたしの眉が寄ったのを見たのか、茉清さんが苦笑しながらその本を鞄の中に仕舞う。持って帰って読む気なのか……。

「そんなに嫌わなくても良いじゃない。これ、薫子さんのところの……ええと、例の騒がしい子が書いたんでしょう?」
「そうだよ薫子ちゃん。陽向ちゃんが可哀想じゃん」


 む……そうは云われてもなぁ。あたしはプライベートを面白可笑しく脚色されて文章にされるって云うのは遠慮したいんだけど。
 むむむと唸っていると、背後の扉が開くのが聞こえた。こんな時間にあたしたちの他にも居残りが、と思って振り向くと。

「お待たせしました、茉清さん。……あれ、千歳さんに薫子さん」
「聖さん。そっか、待ち合わせって聖さんか」


 茉清さんもそれなりに人付き合いが良くなったけど、一緒に帰るほど仲が良いのは聖さんくらいだもんね。
 あたしがニヤッと笑って見せると、茉清さんはちょっと顔を赤くしながら慌てて立ち上がった。

「そ、それじゃあ帰ろうか」
「そうですね。……あれ、茉清さん、例の本は読んじゃったんですか?」
「いや、まだ半分ぐらい。まあ、今日中には読み終わるから、明日の朝に貸すよ」
「え、ちょっと待った。聖さんもあの本読むの?」
「そうですよ。あのお話の中の薫子さん、ちょっと可愛くて好きなんです」
「んな……」


 舌を出してからかい気味に笑う聖さんを見て絶句する。陽向ちゃん、あたしをどんな風に書いているんだ……。

「ね、ね、私は?」
「千歳さんですか? 千歳さんは、キリッと格好良いクールなお姉さんタイプです」
「おお〜……流石は陽向ちゃん、分かってるね!」
「いやちょっと待て、それは可笑しい」


 逆でしょ普通。コレのどこがクールで格好良いって云うのさ! いやあたしがそうだって云うんじゃなく、普段の様子を考えればだね……。

「まあ、フィクションだし。いくらなんでも本人そのままの性格じゃ申し訳ないと思ったんじゃない?」
「……そう思うなら笑うのを止めてくれませんかね、茉清さん」
「おっと……こっちに飛び火しないうちに帰ろうか、聖さん」
「はい。それじゃお先にです、お二人とも」
「ばいば〜い」
「む〜……」


 膨れているあたしを見て笑いながら、二人は教室を出ていった。……千歳、あんたも笑ってるんじゃないの、全くもう。

「いいじゃない、可愛いって云われたんだから」
「自分がそう云われているんならまだしも、自分をモデルにした架空のキャラが可愛いと云われて、何であたしが嬉しいと思わなきゃいかんのだ」
「え〜、そう? 薫子ちゃんに可愛いところがあるから、お話の中の薫子ちゃんも可愛くなると思うんだけどなあ」
「む……ほ、ほら、もうその話は良いから。帰るよっ」
「……照れてる〜?」


 いいえ、あたしの顔が赤いのは夕日の所為です。





「なんか、ここ数日ですっかり涼しくなったよね」
「そうだね」


 千歳と二人、茶色くなった桜並木を歩く。温度変化が激しい為か、緑色のままで地面に落ちた葉っぱも見えた。
 落ちた枯れ葉の中に大量の毛虫が居て大騒ぎになった、とか云う下らない理由の所為で、桜並木の掃除は用務員さんが昼間のうちにすることになっている。あたしも大量の毛虫なんて見たくないから、それはそれで有り難い。
 まあ兎も角そう云った訳で、放課後になる頃には、結構落ち葉が積もっていたりするんだけれど。

「落ち葉を集めて焼き芋とかしてみたいよね」
「それは確かに心惹かれる……けど、野焼きは法律で禁止されちゃってるしね」
「む〜……焼き芋も出来ないなんて不便だよ……」


 千歳が落ちている葉っぱを蹴りながら文句を云う。
 全く以ってその通りだとは思うけど、煙が迷惑になるのは本当のことだし。
 聖應では、創造祭の後のキャンプファイヤーだって看板やら何やらを燃やすんじゃなくて、それ専用の燃料を用意しているくらいだしね。

「う〜、お芋〜……良し、今日のデザートは焼き芋、君に決めたっ!」
「スイートポテトとかじゃないの? いつもは結構手を加えているのに」
「薫子ちゃん。焼き芋は、焼き芋だから良いんだよ!」


 云いたいことは分からなくもないけれど、理屈になってないと思うな、それ。

「それはそれとして、焼き芋なんて寮で出来るの? 焼き芋って云うくらいだし、火で焼かないと駄目なんじゃない?」
「寮には大きなオーブンがあるから大丈夫だよ」


 なるほど。七面鳥の丸焼きが出来るぐらいのオーブンだし、焼き芋ぐらいは簡単に出来るよね。そんなことを考えながら、あたしは寮の扉を開けた。

「ただいま〜」
「今、帰ったよ〜」


 おや? 玄関に見慣れないローファーが三つも有る。お客さんかな?
 靴を脱いで廊下に上がり、取り合えず食堂にでも顔を出すかとそちらを向いたら。

「待ってたわよ」
「げっ……!」


 何故、沙世子さんがここに居る! まさか、早速仕返しに来たの!?
 あたしは思わず回れ右して、千歳を沙世子さんの方に押してから階段へと――

「ここは通れないぞ」
「おおっと、薫子お姉さま。申し訳有りませんネエ」
「んなっ!?」


 ――振り向いたら、上からさくらちゃんと耶也子ちゃんが現れた!

「千歳――あ」

 どうしようかと千歳の方を見ようとしたら、あたしの腕に柔らかい感触が。見下ろすと、なんと優雨ちゃんがあたしの腕にしがみ付いていた。

「……にげちゃ、だめ」
「うっ……」


 上目遣いで口を尖らせている優雨ちゃん。いくら何でもこの腕を振り払うのは無理だ。思わず及び腰になるあたしの肩に、ポンと沙世子さんの手が置かれた。

「知らなかったの? 副会長からは逃げられない」

 アンタはどこの大魔王ですか。大体、逃げられないのは優雨ちゃんからであって沙世子さんからじゃないやい。

「……一体、どうやってあたしたちが帰ってくるのが分かったのさ」
「あのねえ、桜並木を焼き芋焼き芋大声で云っていたのは誰よ?」


 ぬあっ、それは盲点だった!
 あたしを捕まえて良い笑顔で笑っている沙世子さんからそっぽを向くと、初音が二階から降りてくるのが見えた。

「もう、いきなり部屋を飛び出したと思ったら……騒いじゃ駄目だよ?」
「ゴメン初音。でも大丈夫、犯人は捕まえたから」
「犯人って……あたしは何もしてないよ」
「嘘云いなさい。変な噂を流して……」
「それは千歳の提案だよ! ……って、あれ、千歳?」


 千歳に説明させようと思ったら、いつの間にかその場に居ない。逃げられた……。

「薫子ちゃん、先に手洗いとうがいだよ。最近は風邪が流行ってるんだし……一息吐いたら私の部屋に来てね?」
「う……分かった」


 優雨ちゃんから解放されて、あたしは渋々と洗面所へ向かう。お、お説教かなあ……?





「もしも〜し、入っても良いですか〜?」

 初音の部屋の扉をノックしながら、何となく、小さめの声で尋ねる。残念ながら聞こえてしまったようで、初音が扉を開けてくれた。

「どうぞ、薫子ちゃん」
「うん。それで……何の用、かな?」
「あはっ……別に、怒ってるわけじゃないよ」


 恐る恐る尋ねると、初音が顔の前で手を振った。あれ、あたしはてっきり、沙世子さんから話を聞いて怒ってるものだとばかり思ってたのに。
 部屋に入ってみると、折り畳み式のテーブルを囲んで、ちょっと不貞腐れた感じの沙世子さんと、憮然とした表情の耶也子ちゃん。そして、どこか楽しそうな表情をしているさくらちゃんが居る。机の上にはノートやら紙束等が並んでいた。

「もしかして、生徒総会の打ち合わせ中?」
「そうよ。自業自得とは云え色々と煩くなっちゃったから、間に合う予定だった資料整理が出来なくなってね」


 肩を竦めた沙世子さんが、資料に目を通したままで呟いた。
 悪者を演じることにしたのは良いものの、その所為でいつもは集まる『有志の協力者』が極端に少なくなってしまったらしい。
 もしかして、あたしに手伝えってことだろうか?

「あ、あたしは場違いじゃないかな〜、なんて……手伝えないよ?」
「そうじゃないよ、薫子ちゃん。ほら、その……私のことで、沙世子ちゃんと生徒総会で話し合うんでしょう?」
「……出来レースみたいなものだけど、議題をスムーズに進めるなら、事前に打ち合わせておいた方が良いでしょう? 何しろ、貴女が代表者なんだから」


 むむ、そう云うことか。確かに、事前に打ち合わせをしておいた方が気が楽になるよね。あたしにはアドリブで全部遣るなんて無理だと思うし、有る程度の方向性を決めておかないと。

「私は最初っから勝つ気なんて無いけれど、貴女の云い分がちゃんとしたものに聞こえないと、結果がどうなるか分からないんだから。……喋り方から、指導するわよ」
「うっ……!?」


 沙世子さんが資料から目を上げて、初音には見えないようにしながらニヤッと笑った。も、もしかして……これで意趣返しする心算なんじゃ……?


「確かに初音がこの話のキャラクターのモデルに――」
「ほら、『初音』じゃなくて『皆瀬生徒会長』でしょ」
「うっ……」



「実際に渡されたおメダイは……昨年、一昨年と年度を越した時に、制服と一緒に買った時に――」
「ほらそこ、『買った』じゃなくて『購入した』でしょ」
「え〜……そんな、細かい……」



「然るに、この件で問題になるのはおメダイの受け渡しと云う行為そのものではなく、……新たに購入した物を渡しゅと――」
「噛んだ、最初からやり直し」
「む、無茶言わないでよぅ!」



 ……。

「うば〜〜〜……」
「か、薫子ちゃん、大丈夫?」


 大丈夫じゃない。沙世子さんは絶対にサドだ。だってほら、初音のベッドに突っ伏しているあたしを見て……そこ、羨ましそうな顔してんじゃないの、ハツネスキーが……。
 あたしがそうやってぐったりしていると、初音の部屋の扉がノックされた。

「は〜い。……あ、優雨ちゃん。史ちゃんも」
「……お茶、持ってきた」
「千歳お姉さまから、焼き芋の差し入れもあります」


 なにっ! 千歳ってば顔を出さないと思ってたら、早速作ってたのか。体を起こすと、ふわっとした甘い匂いが鼻をつく。うっ……お腹が鳴りそう。

「わ、美味しそう。うう……晩御飯の前だけど、食べないのは勿体無い……」

 なにやら初音が葛藤している間に、優雨ちゃんと史ちゃんは、書類等をどかしたテーブルにお茶と焼き芋を並べていく。

「……頂いても良いのかしら?」
「はい、お召し上がり下さい」
「みんな、帰るまでの時間もあるから……途中でお腹が空かないように……」
「そ、そういうことなら頂いちゃいましょうかネ」
「そ、そうだな」


 初音を除いたみんなが頂きますと云って、美味しそうに焼き芋を口にした。おお、熱さも丁度良いくらいで実に美味しい。この、しっとりとした粉っぽさ(自分でも何云ってるのか分からないけど)が堪らないね。

「うう〜……」
「はつね、食べないの?」
「くっ……今日だけは、ダイエットのことを忘れます! いただきま〜す」


 優雨ちゃんに尋ねられた初音は、なんとも情けないことを云ってから焼き芋に齧り付いた。ダイエットのことは忘れるって……千歳がデザートを作った時はいっつも忘れてるような気がするけれど。まあ、云わぬが花か。

「それにしても……もう、こんな時間なのね。結構遅くなっちゃったわ」
「そうだね。沙世ちゃんたちもそろそろ帰らないと」
「ですネエ。一応、家に連絡はして有りますけど、あまり遅くなるなら迎えに来てもらわないと駄目かな?」
「でも、まだ作業は残っていますが……」


 帰り支度を始めているさくらちゃんを横目に見ながら、耶也子ちゃんが難しい顔をする。初音と沙世子さんは顔を見合わせた後、仕方が無いと云うように首を振った。

「それはまた、明日にするしかないでしょうね」
「そうだね。みんなには迷惑を掛けちゃうけど……」
「そんな顔しないで。初音の所為じゃないでしょ?」


 何回も繰り返されたであろう遣り取りを始める二人。沙世子さんの気持ちも分かるけど、そういう風に云えば云うほど、初音は気にするようになっちゃうんだけどな。
 焼き芋の最後の一欠片を口に放り込んだあたしは、ゆっくりとお茶を啜ってから、ふと思い付いたことを初音に云ってみた。

「あのさ〜初音。生徒総会に間に合わないって云うんなら、沙世子さんに泊まってもらえば?」
「ちょ、ちょっと何云ってるのよ七々原さん! そんなの無理に決まってるでしょ!」
「そうだよ、薫子ちゃん……お泊りの道具も無いし、寮母さんにお話もしてないんだから。だから沙世ちゃん、明日は泊まる用意をしてきてね?」
「はあっ!? 初音まで何云ってるの!?」


 うぷぷ……自分で無理だって云っておきながら初音に同意されて落ち込んだかと思えば、明日泊まりに来いって云われれば嬉しそうに慌てちゃって……やばい、楽しい。香織理さんが人をからかう気持ちが良く分かるわ。

「ほら、私は前にも云ったでしょう? 寮を、もっと人の集まる場所にしたいって。友だち同士でお泊まり会をするみたいに、寮にも泊まりに来てくれる人が居ると良いなって思ってたの」
「……気持は分からなくもないけれど、このややこしい時期に友だちを呼ぶなんて出来ないでしょう?」
「だ・か・ら、生徒総会の準備って云う理由を付ければ、安心して呼べるじゃない?」


 うわ、初音ってば……状況を逆に利用するとか、何と云う大胆不敵。……ふむ、ここはちょっと手を貸すか。

「ね、沙世子さん」
「……何よ」
「ほら、初音も謹慎なんて大変なことになって、ちょっとストレス溜まってるしさ。ここは一つ、初音を助けると思って」
「む……」


 沙世子さんはぐるっと他の人たちを見回して考えた後、誰も反対していないのを見て、肩を竦めて溜め息を吐いた。

「……仕方無いわね。でも、親が駄目だって云ったらこの話は無しだからね?」
「うんっ。それじゃ沙世ちゃんは、ちゃんと御両親を説得してね?」
「……素直じゃないですネエ、副会長も」
「そうだな……だがそこが良い」


 お〜いそこの後輩二人、本音が出てるぞ〜。まあ、嫌そうな振りをしながらも口元がニヤけてる沙世子さんを見れば、誰だって同じように思うだろうけどね。





 沙世子さんたちが帰って、寮の夕食も終わった後のこと。あたしと千歳は梶浦先生から聞いたことを伝える為に、お茶を用意して初音の部屋を訪ねていた。

「――と云うわけで、初音が生徒会長を続けるのは何の問題も無さそうだけど、寮監に関してはどうなるか分からないって」
「緋紗子先生は、寮則を変えて子供だけでも大丈夫だよってことにすれば、会議をするのに有利だって云ってたけど……」
「そうですか。う〜ん……」


 話を聞いていた初音と一緒に、三人揃って首を捻る。
 梶浦先生が寮の中のことに就いても気を配ってくれているのは、千歳が幽霊だっていう、人に云えない事情があるからだ。
 だけど普通は規則を守らせる側になるわけだから、ハッキリした理由が無い限りは、新しい寮監を入れることに反対なんか出来ないだろう。

「ねえ初音、寮則を変えることは出来ないの?」
「……寮生のみんなで話し合って賛成が過半数を超えたあと、学院側に提出して、それが認められれば変えられますけれど」
「いや、うん、それは分かってるんだけどさ」


 って云うか、初音は今、わざと話題を逸らしたでしょ。

「寮則を変えるのに抵抗がある?」
「……はい。代々守ってきたものですから」
「ん〜、私は良く分からないんだけど、この寮則って誰が決めたの?」
「えっ?」


 千歳の素朴な疑問に、あたしと初音は思わず顔を見合わせた。そう云えばその辺りのことは知らないや。

「ええっと……由佳里お姉さまは、まりやお姉さまから受け継いだ、としか教えてくれませんでしたけど……」
「まりやお姉さま……?」
「そう、御門まりやさんって云って、初音のお姉さまだった由佳里さんの、そのまたお姉さまだった人だよ。……ん?」


 『御門』まりや? 御門って、確か千歳の苗字……だよね?

「ま、まあそれは兎も角、門限くらいはちゃんと決めても良いと思うんだよね。別に夜中に出歩くわけじゃないんだしさ」
「それは、そうなんですけど……一度、厳しく取り締まる方向で話が進んでしまうと、元の自由を取り戻すのは凄く大変だから。なるべくなら変えたくないなって」
「う〜ん、どうしたものかなあ」
「……いっそのこと、私たちに優しい寮監さんを探してきて、この人にしますって緋紗子先生にお願いした方が早くないかな?」
「ええっ? 流石にそれは無理なんじゃない?」


 アイデアとしては良いかもしれないけれど、そんな人がほいほいと見付かるとは思えないけどなあ……。





**********





「あ、もしもし? あたしよあたし、あたしだって。……そのギャグはもうやったから。どう? 瑞穂ちゃんとイチャラブしてる?」
『――! ――』
「はっはっは、そんなに怒りなさんな」
『――』
「……なによ、あたしが日本に居ちゃ悪い? あたしも色々と遣ることがあるのよ。ま、それは兎も角さ、折角だからお茶でもしないかと思ってね」
『――』
「何よ、女同士の秘密の語り合いは嫌なの?」
『――。――』
「別にアンタをからかったりするわけじゃないっての。実は今日、由佳里から面白い話を聞いてね……」




**********

 そんな訳で、直接名前を出さなくても誰だか丸分かりな人が登場です。
 え? まだ留学中? だからご都合主義なんじゃないですか(笑)

 

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
ついに出ましたねOG軍団…って訳でこんばんは。
そーいえば、週1で電話してるんでしたね。初音とゆかりん。

予想通りの人と、予想外の人がいますけど…
とりあえず、本作ではツンデレラEDを採用してるんですね?
紫苑さんは厳島に嫁に行ってしまったのか、それとも「エトワール」みたいに貴子と同じ大学に居るんでしょうか…。
余計な事が気になってしまいます。

しかし、今のところ作品最強のかき回し要員は、どう絡んでくるんでしょうねぇ…。楽しみです。
ついでに、どの程度までゲストが出演するのか。3人だけか、他に出るのか。
それとも、期待させておいて全く出ないのか!(笑)

乞う、ご期待!って感じですね。
えるうっど
2011/10/11 21:05
えるうっどさん、こんばんわ。

一応のところ、やるき箱2の貴子ルート→エトワールの流れです。まあ、あまり細かいところまでは気にしなくてもOKですが(笑)

次回の話では二人出てきますが、それ以降がどうなるかは話の展開しだいですかね……。
あんまり人を多くすると書き分けが大変なので。特にまりやと薫子は一人称が同じだし、台詞で書き分けるのが大変。

あと、瑞穂は出てきません。(完全な番外とかならば兎も角)

では、またお越し下さい。
A-O-TAKE
2011/10/13 22:04
お久しぶりです。
6章4話読ませていただきました。
遂に(?)前作の彼女たちが出てきましたね。名字が同じ御門という設定は特には原作で取り立てて使われたのはケイリルートの一見ぐらい…でしたよね?
彼女と千歳(千早)が出合ったときどういったことが起きるのか、楽しみにしています。
では、次話を期待してお待ちしています。

2011/10/15 15:07
唯さん、こんばんは。

原作側が話の中で登場させると「公式設定」になっちゃうので、前作のキャラは登場させないってのがお約束ですからね。だからこそ二次創作で想像を広げる余裕があるんですが。

なお、この話の設定の中では、まりやは千歳のことを知っていることになっています。(妙子が千歳のことを忘れていないため)
なので、まりやが千歳と会ったときに驚くのは別の意味……とまあ、それは次話で。

では、またお越し下さい。
A-O-TAKE
2011/10/16 20:23
報告です


・職員会議で寮監に付いて→職員会議で寮監に就いて
・寮監のことに付いて→寮監のことに就いて
・「生徒たちだけもで大丈夫」→「生徒たちだけでも大丈夫」
・待ち合わせをね。 二人は?→待ち合わせをね。二人は?
・沙世子さんからじゃないや→沙世子さんからじゃないやい
・肩を竦めて溜息を吐いた→肩を竦めて溜め息を吐いた
・寮の中のことに付いても→寮の中のことに就いても


焼き芋が出来ないなんて…行きづらい世の中だ!!
それにしても、キャンプファイヤーで燃料使うなんて…男の浪漫がっ!!…女の子しかいませんでしたね
Leon
2011/11/13 14:25
焼き芋はホントに残念です……まあ、寒い中に焚き火で暖をとることが無くなったんですから、仕方が無いかもしれませんけれど。オーブントースターとかだとイマイチ面白みが無いし、だからと言って屋台の焼き芋は高いしなあ。
正月には神社で焚き火(お焚き上げ)やってますけど、あれに芋を入れる訳にはいきませんしねw

>キャンプファイヤー
自分もどんなものかは知りません。でも、それ専用の道具らしいですから、それほど陳腐なものじゃないと思いますけれど。
キャンプ場とかでは、最近はどうなんだろう?
A-O-TAKE
2012/02/03 23:33
妃宮さんの中の人 6-4 A-O-TAKEの隠し部屋/BIGLOBEウェブリブログ
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